自分にあった進路を見つける話

「大学に行けば大丈夫」な時代は終わり。進路について調べたり、見たり、聞いたりした話しをまとめていきます。

専門職大学とは 〜新制度の学校はこれからの日本を救うのか?

2019年4月、55年ぶりとなる「新しい制度の学校」が誕生した。その名を「専門職大学」という。

 

なぜ少子高齢化が進む日本において、新しい制度の学校が必要なのか?専門職大学は大学や専門学校とは何が違うのか?

実際に専門職大学の学校説明会に参加してみて、分かったこと、疑問に思った事をまとめる。

 

なぜ新しい制度の学校を設立するのか?

簡単にいうと「既存の大学・専門学校ではこれからの日本に必要な人材を輩出できない」とされたからだ。

必要な人材とは「理論にも裏付けられた高度な実践力を強みとして、専門業務を牽引できる人材」であり、かつ「変化に対応して新たなモノやサービスを創り出すことができる人材」だそうだ。

 

既存の大学は主に「学術的な研究」をテーマにしている。広く教養を身につけるとともに、深い専門性をもって研究を行い、応用的な能力を発展させる教育機関とされている。

一方で専門学校は主に「職業人に必要な実学」をテーマにしている。実践的な技術習得を目的とし、専門的な技術者を養成するための教育機関とされている。

例えるならば、新しいAI技術の研究開発をする機関が大学で、新しいAI技術の使い方を習得する機関が専門学校、というわけだ。

しかし、これからの日本には新しいAI技術の研究開発が出来ながらも、技術を実際に仕事の現場で活かすことまで出来る人材が求められれている。

そこで大学・専門学校のいいとこ取りをしたハイブリット学校を創ろうということで「専門職大学」が設立されることになった。

 

大学や専門学校との違いは?専門職大学の特徴とは

専門職大学がウリにしているのは「産業界等と連携した職業教育」だ。

卒業単位の4割程度以上を実習等の科目とし、企業内実習(インターンシップ)等を4年間で20単位以上履修することになっている。20単位は時間にすると「600時間」、日数にすると約3ヶ月に相当する。

このウリが既存の大学との違いとされており、大学のゼミなどに比べてもより職業現場との結びつきが強く、その点は専門学校らしさを要しているようだ。

専門学校との違いは、専門性を身につけながらも「特定の職種に絞られない広い知識習得」にある。限定的な実務技術の習得ではないため、卒業後も幅広い就職ができることを狙っているようだ。

それに加えて「学士(専門職)」を取れるので、海外企業での就職や大学院進学などに活用できるとされている。

 

で、結局「これからの日本に必要な人材」を輩出できるの?

まだまだ始まったばかりの学校なため、不明確なことは沢山ある。

その前提で意見をまとめると、専門職大学は「これからの日本に必要な人材」を輩出するのは難しいと思う。

おそらく、大学の持つ「4年」という長い期間を、専門学校が持つ「勉強をさせる強制力」をハイブリットしたに過ぎず、「めちゃめちゃ専門的な技術者」を輩出することしか出来ないのではないかと懸念する。

それでは必要な人材定義の「理論にも裏付けられた高度な実践力を強みとしてという部分しか達成できていない。

 

そう思う理由は2つある。

1つは各専門職大学の元になっているのが専門学校ということ。専門職大学設立に名乗りをあげた多くの学校は、専門学校を運営している学校法人だ。そのため授業カリキュラムは専門学校がベースになる可能性が高い。

先に述べたように、専門学校は専門的な技術者を輩出するための機関なので、その授業を受ければ専門的な技術者になれるだろう。

また専門学校がウリにしている「就職力」は、学生に対して出席必須や課題必須などの強制力に裏打ちされていることが多い。それが2年ではなく4年になるので、「めちゃめちゃ」技術力は身につく。

もう1つは大企業でのインターンシップを行うことだ。「大企業でインターンシップを行う」ということだが、大企業のどの部門・部署でインターンシップが出来るかが重要だと思う。

これがもし「古い日本企業的な体質」の部門・部署でのインターンシップだとしたら、せっかく専門職大学で身につけた技術や考え方を萎えさせてしまう可能性がある。

古い日本企業的な体質に染まった学生が「これからの日本に必要な人材」になり得るだろうか。

 

それでも、専門職大学の卒業生がどんな人材になるのかとても楽しみだ。

もしかしたら10年後、20年後の日本を牽引しているのは専門職大学の卒業生たちかもしれない。彼らがこの記事を嘲笑してくれていれば、記事としては失敗だが、日本としては成功だ。

 

これからの専門職大学に目が離せない。