進路落語2:出来心(花色木綿)~大学合格自慢ver
有名な大学に入る事。
それは受験をする当人たちのステータスになる以上に、奥さまたちにとって重要なステータスになることは往々にしてあるのです。
あのお宅には負けたくないから、ちょっと見栄を張ってしまう、そんな出来心のお話です。
「はぁ、敏子さんは良かったわね、息子さんが京王大学に入れて。うちはダメだったもの。今日これから良子さんに会うのが重たいわ。絶対に、息子の京王大学入学自慢になるもの」
「そんなことはないわよ。ここだけの話にしてね。実はうち、、、京王大学に顔が利いて、、実は裏口入学なの。聡子さんには言ったけれど、良子さんには絶対に言えないわ...」
「そうなの...!」
「準備も大変だったんだから、教授たちに偶然を装ってあって、仲よくしたり。良くわからない話の後援会に出席したり。打合せのために行ったこともないような料亭を予約したり...。もうこりごりだわ」
「それでも京王大学に入れたことは変わらないんだから、いいじゃない。どうしよう、良子さんにバカにされるわ…私、勢いでウソついちゃうかも」
「気にしすぎよ、ちょっとお手洗いに行って来るわね」
「あら~、聡子さん、お待たせ~。敏子さんは?」
「良子さん、敏子さんは今ちょうどお手洗いに行っているところよ」
「そうなの。ところで聡子さん、敏子さんのところ息子さん、受験はどうだったの?3人で京王大学に通うっていうお話は実現しそうなの?」
「…え、ええ。何とか3人とも京王大学に入学できるみたいですよ」
「あら!そう!良かったわ~、全員同じ志望校だったのに、うちだけ先に指定校で決まってたじゃない?誰か落ちてしまったらどうしようかと思っていたの。気を遣っちゃうじゃない。さっそく入学式の打合せもしなくちゃね。制服の準備も大変そうだし」
「せ、制服ですか?」
「そうよ、入学案内に書いてなかった?入学式は伝統の制服着用でお願いします、て。今時、制服統一で、しかも裏地は花色木綿だなんて。さすがお金持ちの伝統校は違うわね~」
「あ、ああそうでしたね。準備しないとな~花色木綿」
「ところでお宅の息子さんは何学部?文学部?法学部?それとも理工学部?」
「えーと、法学部だったかなぁ..と.」
「あら凄いわね!法学部だなんて、一般で入れたの?推薦入試?それともAO入試で?」
「(あら良子さん来てるわね、聡子さん、あたふたしてるけど何の話をしているんだろう)」
「ええーと、AO入試...だったと思います…。うちの子、そんなに頭良くないから」
「AO入試でも立派よ!京王大学のAO入試は受験資格をクリアするのだって難しいんだから、しかも試験内容は他の大学のAOと違ってグループディスカッションだったり、対策が難しい内容だったりするんだから。どんな準備をしたの?うちの下の子も来年受験だから、ぜひ準備を教わりたいわ」
「...えーと、う、準備、ですね...伝統校なので、裏地が花色木綿の制服を...」
「それは入学式の準備でしょ!私が聞いているのは、入試に向けてどんな準備をしたかよ!」
「あ、ああ~…そうでしたね。ええと、教授たちに偶然を装ってあって、仲よくしたり。良くわからない話の後援会に出席したり。打合せのために行ったこともないような料亭を予約したり...」
「ちょっと、さっきから聞いていれば、聡子さんの息子は京王大学に入学できなかったでしょう!」
「あら聡子さん。やっぱりそうなのね、さっきから話を聞いていれば、何にも知らないしおかしなこと言うし、怪しいと思った!どうしてそんなウソをついたの!」
「ほんの出来心なんです...。でも聞いてください、敏子さんの息子さんだって、裏入学なんですよ!」
「ちょっと、それは言わない約束でしょ!」
「なに?裏ってなによ!」
「ええと...裏は、花色木綿」