進路落語1:早稲田こわい
とある学校の放課後、 進路に悩む高校生たちが円になって会話をしてる
「もう俺たちも3年生だし、そろそろ進路考えなきゃなぁ」
「いやーうちはお金ないから、国公立しか行けんのよ」
「さすが、すげーなぁ。最低でも日東駒専、 出来ればMARCHくらい行きたいなぁ」
「そうなのか?それじゃあ俺は指定校で青山学院大学にしようかな。あそこはキャンパスが表参道だし、お洒落な子が多いっていうしな」
「じゃあ俺は立教大学にするよ。場所は池袋だし、何てったってキャンパスがお洒落だからな、偏差値だってそこそこ高いし」
「それをなら上智だろ〜、オシャレなうえに、学歴に箔がつく。帰国子女だって多いんだから」
「おいおい箔がつく大学目指すなら慶応大学目指さなきゃウソだろう、慶応ボーイなんて言葉もあるくらいだし」
「すごいな〜有名大学が指定校で行けるっていうんだから。ところで 辰はどこが良いんだい」
「ない」
「ないことはないだろう〜」
「ないっ」
「なんかあるだろう?おまえさんだって立派な大学にいきただろう?」
「立派な大学だって!おしゃれだ? キャンパスが綺麗だ?学歴に箔がつくだ? そんなことで進路選ぶことじゃないだろう。 自分が大学でやりたいかで選べってんだ。 それが名前だけで選んでるようじゃあ、 どこの大学行ったって変わりゃしないよ」
「そういうお前の内申点なら、ぎりぎり早稲田大学だって行けるんじゃないのかい?」
「早稲田?!俺は早稲田にだけは行きたくないね。 あの大学に通うなんて将来がこわくて、こわくて。勘弁してくれ。ぁあ、 震えてきた、ちょっとトイレ行ってくる」
「ちぇっ、なんだあいつ」
「いいねぇ、そうしよう。あのやろう前から気に食わなかったんだ、
ちょっと勉強出来るからって俺らのことバカにしやがって」
「早稲田って聞いただけで震え上がるくらいだ、 早稲田に進学が決まったとなれば、気絶してしまうかもしれねぇ」
「ようし、そうと決まれば、早速用紙に名前を書いて職員室に提出しに行こう」
「おい、辰のやつが進路のことで話があるって、先生に呼び出されたぞ」
「おお。いよいよ先生の口から、早稲田大学への進学決定が告げられるんだな。あいつ、どんな顔するかね。泡吹いて倒れるところ見に行ってやろうぜ」
「なんですか先生、進路のことで話があるって」
「辰、まさかお前が指定校推薦で早稲田大学に決めるとはな。しかも、例年は倍率が何十倍にもなって先生たちも大変なんだが、今年はお前しか希望してこないとは。内申点ぎりぎりでも、合格は合格だ。早稲田大学いっても頑張れな」
「先生・・・」
「くっくっ、辰のやつ、驚いて返すことばもないか」
「おい、辰!よくも騙してくれたな!こわい、こわい言いやがって。お前こそ、学校の名前で大学選んでるんじゃないのか」
「そんなことはない」
「じゃあ、辰は早稲田大学に行って何がやりたいんだ」
「俺か? 俺は早稲田大学で、単位が落としたい」